JPiere在庫管理カスタマイズ

 ここではオープンソースのERP iDempiere(アイデンピエレ)の日本商慣習対応ディストリビューションである、JPiere(ジェイピーエール)に追加されている在庫管理のカスタマイズについて紹介しています。

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JPiere在庫管理のカスタマイズ

期末在庫評価

◆期末在庫評価の必要性

 ERPでは一般的に、在庫評価はリアルタイムで行います。在庫評価をリアルタイムで行う事により売上原価、そして損益がリアルタムで算出でき、貸借対照表や損益計算書もリアルタムで作成する事ができます。リアルタイムで企業の損益状況を把握できるというのはERPの大きな導入メリットのひとつです。

 多くのERPと同様に、iDempiereでもリアルタムで在庫評価を行い、貸借対照表、損益計算書もリアルタムで作成できます。

 しかし、リアルタイムで企業の損益状況を把握するためには、システムをリアルタイムで運用する必要があります。これは、バッチ処理を前提とする業務処理やシステム運用とは異なる考え方であり、バッチ処理を前提とする業務処理やシステム運用を行っていた企業がERPを導入し、リアルタイムで企業の損益状況を把握しようとした場合は、大きなBPR(Business Process Re-engineering)が必要になります。

 そしてERPにおいてリアルタイムで在庫評価を正しく行う事は簡単な事ではりません。ERPは様々なデータが連携しており、在庫の増減に係る処理はイレギュラー的な要素が多くあります。そして在庫を評価する方法は複数あります。これらのあらゆる要素をすべて考慮し、矛盾なく汎用的にリアルタムで在庫評価を行うのは、簡単な事ではありません。

 

 iDempiereでは、”標準原価”、”先入先出法(FIFO)”、”後入先出法(LIFO)”、”平均発注単価”、”平均請求単価”、”最終発注単価”、”最終請求単価”の7つの方法で在庫の評価ができるように標準機能で用意されています。そして、それぞれの評価方法で、在庫の評価金額を”クライアントレベル”、”組織レベル”、”バッチ/ロットレベル”と3つのレベルで算出できるように設計されています。 7つの在庫評価方法と3つの在庫評価レベルがあるため、組み合わせとしてはiDempiereの標準機能だけでも21通りの在庫の評価が行えるようになっています。しかもiDempiereでは、ひとつの品目に対して複数の評価金額を保持する事ができます(マルチ棚卸資産評価/マルチ原価)。

 しかし、このiDempiereの在庫評価の仕組みが、多くの方の期待に応えられるように完璧に動作するのかというと、残念ながらそうではありません。中には、そもそも実装されていない評価レベルと評価方法の組み合わせも存在しています。そして、実装されてる在庫評価レベルと在庫評価方法であっても、iDempiereを導入するユーザー企業の要件にあっているかどうかは別の話です。iDempiereの提供している在庫評価の機能がユーザーの要件に合致しているかどうかのFit&Gap分析による確認は必要になります。リアルタムで在庫の評価を行うためには、色々なイレギュラーケースを想定して、Fit&Gap分析を行う必要があります。例えば、マイナス在庫を許容する場合にマイナス在庫になった場合の在庫評価ロジックは、実際のiDempiereの挙動とユーザー企業の要件が合致しているかどうか確認する必要があるでしょう。

 iDempiereの導入においてユーザー企業の要件にあうようにリアルタイムで正しく在庫評価を行えるようにする事は、業務要件の実装としては手間のかかる実装のひとつになります。

 そこで、JPiereでは”素早く”、”低コスト”でユーザー企業の課題を解決するために、在庫評価については、期中の在庫評価は”標準原価”を採用し、管理会計として企業の損益を速報値としてリアルタムに把握できるようにし、財務会計として法令を遵守した在庫評価については、決算処理の一環として期末に実施し、速報値とした算出している利益を修正する方法を基本としています。

 

◆JPiereの期末在庫評価イメージ

 JPiereでは、自動仕訳で使用する在庫評価の金額は”標準原価”を前提としています。 iDempiereの”標準原価”は、ユーザー企業が自由に入力する事ができます。JPiereではユーザーが任意に設定した標準原価を使用して、管理会計の観点より企業の損益をリアルタムで把握できるようにしています。

 標準原価を使用する事により、JPiereはリアルタイムで在庫評価を行う必要がなくなります。この事により、リアルタイムで在庫評価を行うための様々な制約から解放されます。その代り期末に在庫評価を行う仕組みが必要となりますが、その実装は確定した数値や取引をもとに計算するので、リアルタイムで在庫評価するのと比較して容易になります。これはJPiereの導入に際し、ユーザー企業とのFit&Gapの工数の軽減にもつながり、在庫評価方法にGAPがあった場合のカスタマイズ工数の軽減にもなります。

 この方法のデメリットは、期中に算出される利益は管理会計としての速報値であり、期末に法令を遵守した財務会計値に修正する必要がある事です。しかし、デメリットとはいっても、もともと利益は決算整理仕訳により確定するものです。決算整理仕訳により利益の変動がある事は普通の事ですし、リアルタイムで在庫評価をしていても、在庫の評価損の計上などはやはり決算時に行うのが一般的でしょう。人為的に設定した標準原価と、期末に計算した在庫評価金額が大きくかい離していて、利益に与える影響が大きくなる事が心配かもしれませんが、JPiereの期末在庫評価では、期末に評価した金額を”標準原価”に上書きする機能も提供していますので、標準原価が実際の在庫評価金額と大きくかい離する事はありません。そのため、標準原価の金額と、期末に評価した在庫金額に多少の差はあっても、利益に与える影響は軽微にする事ができます。

 標準原価をいちいち入力するのが面倒に思うかもしれません。iDempiereでは最初の発注時の単価で標準原価を自動設定する機能があります。これを活用すれば、入力の手間を軽減するだけでなく、初期の標準原価と実際の在庫評価金額のかい離も防ぐ事ができます。

 JPiereでは期末において在庫を評価する事により、期中の利益は管理会計としての正確性を担保しつつ、期末の在庫評価に柔軟性を持たせ、 ”素早く”、”低コスト”で導入する事ができます。

◆期末在庫評価資料

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