【JPIERE-0317】物理倉庫

 オープンソースのERP iDempiereでは、基本的な仕様として在庫管理を行う枠組みである"倉庫"は、倉庫の中にある在庫の責任部署を明確にするために、必ずどこかの組織に所属する事になります。この仕様によりセグメント(組織)別の貸借対照表を作成する事が可能になり、在庫の責任部署の明確化とセグメント別の業績評価という観点では理解できる仕様です。

 しかしいっぽうで、現実的には複数の組織の在庫が、物理的に同じ倉庫に中に保管されている事はよくある事でしょう。

 そこでJPiereでは、iDempiereの標準機能としてある”倉庫”はセグメント別の在庫を管理するための”論理倉庫(組織倉庫)”と定義し、地理的に実際に在庫がある場所を管理する”物理倉庫”として、両方の倉庫を”保管場所”に設定する事でマトリクス的に在庫管理をできるようにしました。

論理倉庫と物理倉庫と保管場所
論理倉庫と物理倉庫と保管場所

 

 同じ物理倉庫内であれば、論理在庫移動が行えます。

カスタマイズ情報

2017年5月13日

◆追加カラム

  • M_LocatorTypeテーブルにJP_PhysicalWarehouse_IDカラムを追加

◆追加クラス

  • jpiere.base.plugin.org.adempiere.base.JPiereLocatorModelValidator

【補足説明】保管場所区分の物理倉庫

 保管場所区分に物理倉庫を設定できるようにしたのは、保管場所区分を保管場所の地理的な場所として位置づけできるようにするためです。

 セグメント(組織)別の在庫管理と物理的な在庫管理を保管場所に、組織倉庫と物理倉庫を設定する事で実現しますが、この事により物理的に同じところだが、セグメントが異なるため保管場所が異なるという事が発生します。

 その際に、同じ保管場所と識別するために、保管場所区分を使用できるように考えており、保管場所区分に物理倉庫を設定できるようにしています。そして物理倉庫と保管場所区分の組み合わせを矛盾なく保管場所に設定できるように、モデルバリデーターを使用しています。

 

2017年5月19日

◆追加カラム

  • M_InOutテーブルにJP_PhysicalWarehouse_IDカラムを追加

【補足説明】出荷納品伝票の物理倉庫

 通常、出荷納品伝票は、出荷を行う特定の場所毎に起票されます。そのため、出荷納品伝票に物理倉庫を入力できるようにし、出荷を行う特定の場所を明確にできるようにしています。

 

◆1枚の出荷納品伝票が同じ物理倉庫から作成されている事のチェック

 1枚の出荷納品伝票が同じ物理倉庫の保管場所から登録されているかどうかチェックします。出荷納品伝票のヘッダに設定されている物理倉庫に所属する保管場所以外は、登録できないように制御する事ができます。システムコンフィグ設定で、"JP_INOUT_PHYWH_LOCATOR_CHECK"を"Y"に設定すると、チェックが行われます。

  チェックは、モデルバリデーターで、明細を登録する際には、ヘッダーの物理倉庫と明細の保管場所に矛盾がないかチェックします。そして伝票ステータス更新(Doc Prepare)の際にも、ヘッダーの物理倉庫と、すべての明細の保管場所に矛盾が無い事をチェックします。

物理倉庫が追加されるまでの検討履歴

 JPiereでは、"セグメント別の在庫管理"と"地理的な場所毎の在庫管理"を実現するために、【JPIERE-0317】物理倉庫を追加するまでには、"保管場所タイプ(保管場所区分)"を物理倉庫として使用する事を検討していました。

 

 考え方的には"物理倉庫"マスタを使う場合も、物理倉庫の代わりに"保管場所タイプ(保管場所区分)"を使う場合もどちらも同じ考え方です。"セグメント別の在庫管理"は"倫理倉庫(iDempiereの標準機能の倉庫)"を使用して、"地理的な場所毎の在庫管理"は"物理倉庫"という概念を追加し、保管場所に論理倉庫と物理倉庫の両方の情報を持たせて、マトリクス的に在庫管理を行うというものです。

 

 

 詳しい過去の検討の内容は、【JPIERE-0227】共有倉庫とセグメント別在庫管理と論理在庫移動 に掲載していますので参照して下さい。

 

 これまでは物理倉庫として"保管場所タイプ"を使用しようと検討していたわけですが、"物理倉庫"マスタを追加する事により、"論理倉庫(組織倉庫)"と"物理倉庫"という概念が明確になり、わかりやすい(ユーザーが理解しやすい)と判断し、今回追加しました。そして、保管場所タイプは、本来の保管場所タイプの使い方として、ユーザー企業の要件に合わせて定義して運用して頂きたいと思っています。

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