【JPIERE-0539】契約管理と振替仕訳伝票による費用収益の見越繰延と認識

契約管理で作成した売上請求伝票と仕入請求伝票から振替仕訳伝票を作成する機能です。

この機能は収益の見越繰延をするために売上請求伝票で計上したBS勘定科目(負債勘定)を、振替仕訳伝票で取り崩して収益を認識するのに使用します。そして、費用の見越繰延をするために仕入請求伝票で計上したBS勘定科目(資産勘定)を振替仕訳伝票で取り崩して費用を認識するのに使用します。

売上計上伝票と仕入計上伝票でも同様の事が行えますが、振替仕訳伝票でも行えるようにする事でより柔軟に業務を組み立てる事ができます。

機能概要

契約内容の契約会計情報マスタの設定に従って、売上請求伝票もしくは仕入請求伝票から振替仕訳伝票を作成します。

契約会計情報マスタの自動仕訳の勘定科目を上書きする機能を使用して、売上請求伝票で収益の見越繰延を行い負債勘定に計上した金額を、振替仕訳伝票で取り崩して収益を認識します。この事により、請求タイミングと売上の認識タイミングを分ける事ができます。

同じように仕入請求伝票でも契約会計情報マスタの自動仕訳の勘定科目を上書きする機能を使用して、費用の見越繰延を行い資産勘定に計上した金額を、振替仕訳伝票で取り崩して、費用を認識します。この事により、請求書を受領したタイミングと費用を認識するタイミングを分ける事ができます。

【ポイント】費用と収益の認識タイミングを請求タイミングから分離させて会計的に正しく行うための機能

想定される使用ケースとしては、建設業などで仕入請求伝票で支払った費用を仕掛品(未成工事支出金)勘定に計上し、売上の認識と同じタイミングで振替仕訳伝票を完成にして、収益と費用を対応させる場合などが考えられます。

【補足説明】振替仕訳伝票に起票される仕訳

売上請求伝票と仕入請求伝票から作成される振替仕訳伝票の仕訳には、品目タイプがアイテムの品目マスタが入力されている明細は対象外になります。これは、品目タイプがアイテムの品目は棚卸資産として、販売時に費用と収益の認識が正しく行えて、振替仕訳伝票を使用して見越繰延する必要が無いためです。

契約会計情報マスタの設定

振替仕訳伝票を作成する設定は契約会計情報マスタで行います。

契約会計情報タブ

契約会計情報
契約会計情報

◆振替仕訳伝票を使用する

ONにすると、売上請求伝票と仕入請求伝票の転記処理の後で、振替仕訳伝票を作成します。

【入力制御】

  • 「契約会計情報を使用する」がONの場合に表示される。
  • デフォルト: N

◆振替仕訳伝票の仕訳方針

振替仕訳伝票の仕訳方針を選択します。JPiereの標準機能では下記1択で、振替仕訳伝票の作成をカスタマイズしたい場合に選択肢を追加して拡張できるようにしています。

  • 自動仕訳の設定が無い場合と品目タイプがアイテムの場合は記帳しない
  • 【入力制御】
    • 「契約会計情報を使用する」がONの場合に表示される。
    • 振替仕訳伝票を使用するがONの場合は必須入力。

◆振替仕訳伝票の伝票日付選択

振替仕訳伝票の伝票日付を制御します。

  • 請求伝票の転記日付同じ日付
  • 固定日付
【入力制御】
  • 「契約会計情報を使用する」がONの場合に表示される。
  • 振替仕訳伝票を使用するがONの場合は必須入力。

◆振替仕訳伝票の伝票日付

振替仕訳伝票の伝票日付選択が”固定日付”の場合に表示されます。ここに設定した日付が振替仕訳伝票の伝票日付になります。

【入力制御】

  • 「契約会計情報を使用する」がONの場合に表示される。
  • 振替仕訳伝票の伝票日付選択が"固定日付"の場合は必須入力。

◆振替仕訳伝票の転記日付選択

振替仕訳伝票の転記日付を制御します。

  • 請求伝票の転記日付同じ日付
  • 固定日付
【入力制御】
  • 「契約会計情報を使用する」がONの場合に表示される。
  • 振替仕訳伝票を使用するがONの場合は必須入力。

◆振替仕訳伝票の転記日付

転記日付選択が”固定日付”の場合に表示されます。ここに設定した日付が振替仕訳伝票の転記日付になります。ここに設定する日付の会計カレンダーが作成されている必要があります。

【入力制御】

  • 「契約会計情報を使用する」がONの場合に表示される。
  • 振替仕訳伝票の転記日付選択が"固定日付"の場合は必須入力。

 

品目契約会計情報タブ

品目契約会計情報タブ
品目契約会計情報タブ

【補足説明】品目契約会計情報は、品目カテゴリ単位の設定

 品目契約会計情報は、品目カテゴリ単位で行います。これは、契約単位で勘定科目を制御するのに、品目ごとの設定では、仕訳情報が多くなりすぎて管理するのが難しくなりますし、全品目共通の勘定科目では、柔軟性に欠くという判断で、品目カテゴリ単位で勘定科目を設定できる仕様にしました。

 JPiereでは、【JPIERE-0148】品目カテゴリの階層化のカスタマイズにより、品目カテゴリを多階層化する事ができます。このカスタマイズを使用して、品目カテゴリは自動仕訳を制御する単位で作成して、業務的に品目をカテゴライズしたい単位を、品目カテゴリ階層レベル1とレベル2を使用するのをオススメします。必要であればレベル3の品目カテゴリ階層を追加して活用して下さい。

 

摘要科目契約会計情報タブ

摘要科目契約会計情報タブ
摘要科目契約会計情報タブ

 

税金契約会計情報タブ

税金契約会計情報タブ
税金契約会計情報タブ

伝票タイプの設定

ベース伝票タイプが"ARI"と”API”の時に、振替仕訳伝票で使用する伝票タイプを設定する事ができます

伝票タイプ(JPiereウィンドウ)
伝票タイプ(JPiereウィンドウ)

【補足説明】売上計上伝票と振替仕訳伝票の使い分け

JPiereでは、費用収益の見越繰延の方法として、計上伝票を使用する方法と振替仕訳伝票を使用する方法を用意しています。どちらにするかは、ケースバイケースで考える必要があります。

しかしながら、品目タイプがアイテムの品目は、棚卸資産として、通常売上の認識時に売上原価も計上されるため、売上計上伝票を使用する事はあっても、振替仕訳伝票を使用する必要はありません。

振替仕訳を使用して、収益の見越繰延を行うのが必要となるケースは、品目タイプがアイテム以外の売上請求伝票明細です。品目タイプがアイテム以外の売上請求伝票明細で、売上請求伝票の作成タイミングと収益の認識タイミングにズレがある場合に、売上計上伝票と振替仕訳伝票のどちらで行うのが良いのか検討して下さい。

販売管理においては、物品を納品したり役務提供を行った時に収益の認識する事が多いため、多くの場合では、売上請求伝票もしくは売上計上伝票で収益を認識するようにした方が使い易いのではないかと想定しています。

【補足説明】仕入計上伝票と振替仕訳伝票の使い分け

仕入計上伝票の役割は、費用の見越繰延を適切に行う事であり、当期商品仕入高を把握する用途にも使用できます。しかしながら、費用の見越繰延を行いたい場合は、振替仕訳伝票を使用する方が行いやすいのではないかと思います。

仕入計上伝票は、入荷伝票が完成された後で作成されますが、仕入請求伝票が作成される前に仕入計上伝票を作成する事ができるため、発注単価と請求単価が異なるようなケースでは、適切な費用の見越繰延が行えません。

そのため仕入請求伝票を起票するタイミングと、費用を認識するタイミング異なる場合は、振替仕訳伝票を使用するのをオススメします。振替仕訳伝票であれば、仕入請求伝票の明細をもとに作成されるので、見越繰延の金額が異なるような事はありません。

【ポイント】

  • 販売管理において収益の見越繰延には、売上計上伝票を使用するのがおススメ!
  • 購買管理において費用の見越繰延には、振替仕訳伝票を使用するのがおススメ!

【注意】消費税の見越繰延

 振替仕訳伝票における消費税の見越繰延は税金情報マスタ単位で行われます。そして、品目タイプがアイテムの仕入請求伝票明細と売上請求伝票明細は、振替仕訳伝票の対象外となるため、品目タイプがアイテムの品目と、それ以外の明細が混在し、消費税の見越繰延を行う場合には、税率は同じでも別の税金情報をマスタを使用して下さい。

 明細毎に見越繰延の判断を行う事は、会計の知識が無いと難しいため、運用においては可能な限り、売上請求伝票と仕入請求伝票は、見越繰延処理する明細としない明細を混在しないようにするのをオススメします。

【補足説明】消費税の見越繰延

仮受消費税と仮払消費税の見越繰延処理として、国税庁のタックスアンサーでは、次のように案内しています。

タックスアンサー>消費税>基本的なしくみ>No.6165 前受金や前払金などがあるとき[令和3年9月1日現在法令等]

(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6165.htm)

「消費税の課税資産の譲渡等や課税仕入れの時期は、所得税、法人税の場合と同じように、原則として資産の引渡しやサ-ビスの提供があった時とされています。

したがって、例えば、工事代金の前受金を受け取ったり、機械の購入について前払金を支払っていたとしても、その受取や支払の時期に関係なく、実際に引渡しやサ-ビスの提供があった時が売上げや仕入れの時期となります。

 同じように、未収金や未払金がある時も、その代金の決済の時期に関係なく、資産の引渡しやサ-ビスの提供があった時が売上げや仕入れの時期になります。なお、前払費用のうち、所得税又は法人税の取扱いにより必要経費の額又は損金の額に算入することが認められている短期前払費用は、その支出した課税期間の課税仕入れに含めることになります。」

上記のように規定されているため、JPiereでは売上請求伝票/仕入請求伝票で消費税も見越繰延できるようにして、売上計上伝票/仕入計上伝票で、それを取り崩して仮受消費税/仮払消費税として処理できるようにしています。

カスタマイズ情報

カラムの追加

◆JP_Contract_Acctテーブル [契約会計情報]

  • IsPostingGLJournalJP [振替仕訳伝票を使用する(use GL Journal)]
  • JP_GLJournal_JournalPolicy [振替仕訳伝票の仕訳方針(Journal Policy of GL Journal)]
  • JP_GLJournal_DateDocSelect [振替仕訳伝票の伝票日付選択 (Doc date selection of GL Journal)]
  • JP_GLJournal_DateDoc [振替仕訳伝票の伝票日付(Doc Date of GL Journal)]
  • JP_GLJournal_DateAcctSelect [振替仕訳伝票の転記日付選択 (Account date selection of GL Journal)]
  • JP_GLJournal_DateAcct [振替仕訳伝票の転記日付(Account Date of GL Journal)]

◆JP_Contract_Product_Acctテーブル [品目契約会計情報]

  • JP_GL_Revenue_Acct [振替仕訳収益勘定(Product Revenue(GL Journal))]
  • JP_GL_TradeDeiscountGrant_Acct [振替仕訳売上値引勘定(Trade Discount Granted(GL Journal))]
  • JP_GL_Expense_Acct [振替仕訳費用勘定(Product Expense(GL Journal))]
  • JP_GL_TradeDeiscountRec_Acct [振替仕訳仕入値引勘定(Trade Discount Received(GL Journal))]

◆JP_Contract_Charge_Acctテーブル [摘要科目契約会計情報]

  • JP_GL_Ch_Expense_Acct [振替仕訳摘要科目勘定(Charge(GL Journal))]

◆JP_Contract_Tax_Acctテーブル [税金契約会計情報]

  • JP_GL_TaxDue_Acct [振替仕訳仮受税金勘定(Tax Due(GL Journal))]
  • JP_GL_TaxCredit_Acct [振替仕訳仮払税金勘定(Tax Credit(GL Journal))]
  • JP_GL_TaxExpense_Acct [振替仕訳租税公課勘定(Tax Expense(GL Journal))]

◆C_DocTypeテーブル [伝票タイプ]

  • JP_DocTypeGLJournal_ID [振替仕訳伝票の伝票タイプ(Document Type of GL Journal)]

◆GL_Journalテーブル [振替仕訳伝票]

  • JP_Invoice_ID [振替仕訳伝票]

◆GL_JournalLineテーブル [振替仕訳伝票明細]

  • JP_InvoiceLine_ID [請求伝票明細]
  • JP_ContractLine_ID [契約内容明細]

リストバリデーションの追加

◆JP_GLJournal_JournalPolicy

  • 自動仕訳の設定が無い場合と品目タイプがアイテムの場合は記帳しない[Both item line and no config will not create GL Journal:BT]

◆JP_GLJournal_DateAcctSelect

  • 固定日付[Fixed Date:FX]
  • 請求伝票の転記日付と同じ日付[Account Date of Invoice:IV]

ダイナミックバリデーションの追加

◆JP_InvoiceLine belong to Invoice

振替仕訳伝票のヘッダに入力されている売上/仕入請求伝票で、振替仕訳伝票の売上/仕入請求伝票明細の入力を制御するダイナミックバリデーション。

修正クラス

◆jpiere.base.plugin.org.adempiere.base.JPiereContractInvoiceValidator

売上/仕入請求伝票の転記処理時に、振替仕訳伝票を作成する処理を追加しています。

カスタマイズ履歴

2024年3月6日(v11):振替仕訳伝票の赤伝に契約管理の情報を引き継ぐ

振替仕訳伝票をリバースすると、作成される赤伝にはヘッダーの契約書や契約内容、売上/仕入請求伝票の情報が引き継がれなかったのを引き継ぐように修正しました。

2024年3月5日(v11): 税金情報を引き継ぐ

消費税の見越/繰延の処理において、振替仕訳伝票で取り崩される、前受金/前払金相当の勘定科目にも、参照情報として、消費税の情報をセットするようにしました。

【補足説明】2022年7月19日(v9)との違い

下記の2022年7月19日(v9)の修正において、同じようなことを行っていますが、2022年7月19日の修正は、振替仕訳伝票で仮受消費税/仮払消費税勘定に相当する科目に対して消費税の情報をセットしていました。それに加えて今回は振替仕訳伝票で取り崩される前受金/前払金に相当する勘定科目にも参照情報として消費税の情報をセットするようにしました。

2022年7月19日(v9): 税金情報を引き継ぐ

消費税の見越/繰延の処理において、税金情報マスタと課税標準額、税額の情報を売上請求伝票/仕入請求伝票から引き継ぐようにしました。

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2022年5月30日(v9): 振替仕訳の明細番号10が重複する不具合の修正

振替仕訳伝票の明細番号10が重複する不具合を修正しました。

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